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2025/05/24 11:00

<ライブレポート>スカパラ×ビルボードクラシックス アンコール公演 ジャンルを超えた“NO BORDER”なステージで大団円

【Tokyo Ska Paradise Orchestra×billboard classics symphonic concert 2025 -ENCORE-】が5月10日に東京・NHKホールで開催された。

 東京スカパラダイスオーケストラが初めてフルオーケストラと共演し、昨年5月に河口湖ステラシアターで開催された特別記念公演からちょうど1年。スカパラ・デビュー35周年を記念して行われた前回公演には、ゲストボーカルとしてハナレグミと中納良恵(EGO-WRAPPIN')、ムロツヨシが登場、さらに指揮・音楽監修に服部隆之、管弦楽に東京フィルハーモニー交響楽団を迎え、総勢70名を超える出演者が富士山麓の野外劇場に集結。服部隆之の祖父・良一が1948年に発表した昭和の名曲「ジャングル ブギ」のオールキャストによるセッションで幕を閉じたこの公演は大きな反響を呼び、再演を望む声が数多く集まっていた。1年の時を経て実現したアンコール公演の会場は、東京のど真ん中にあるNHKホール。スカパラ、服部隆之、東京フィル、そして、ハナレグミと中納良恵が再び一堂に会し、ジャンルを超えた“NO BORDER”なステージを繰り広げた。

 公演は2部制。第1部はスカパラのパフォーマンスだ。いつものようにSEは「I SPY」。ピンクのジャケットで決めた伊達男たちがステージに登場すると、会場は大きな歓声で包まれた。茂木欣一(Dr.)のカウントから始まったオープニングナンバーは「The Last Ninja」。性急なビートとスリリングな管楽器の響きが一つになり、会場のテンションを一気に上げていく。曲終わり、谷中敦(B.Sax.)、NARGO(Tp.)、北原雅彦(Tb.)、GAMO(T.Sax.)が“忍者風ポーズ”を決めるシーンも最高だ。さらに谷中、大森、GAMOがボーカルを取るアッパーチューン「DOWN BEAT STOMP」を放つと、オーディエンスはさらに楽しく踊りまくる。瞬く間に会場の熱気を上げるステージングは流石のひと言だ。「すごい歓声!イヤモニ外すから、もっと聞かせてくれ!」と観客を煽る谷中。「今日はスペシャルなんだよ、ホントに。今日はホントに奇跡だよ!ブリリアントだよ!思い切り楽しんでもらえたらと思います!」というハイテンションなMCの後も、スカパラの魅力とすごさをダイレクトに体感できる場面が続いた。「久しぶりの曲をやります!」(谷中)と紹介されたのは「遊戯みたいにGO」。谷中がメインボーカルを取り、“オイ!オイ!”というコーラスを観客が叫ぶと、ステージと客席の距離がグッと近くなる。緊張感あふれるアンサンブルのなかでメンバーそれぞれのソロ演奏が炸裂した「Great conjunction 2020」、加藤隆志(Gt.)のギターによるイントロから始まり、ロカビリー的な世界を演出した「ONE EYED COBRA」、そして、沖祐市(Key.)がミニシンセでポップな音色を響かせ、終盤で“ワッショイ、ワッショイ!”のコールが発生した「天空橋」とカラフルな楽曲を次々と披露。バンドのボトムを支える、茂木と川上つよし(Ba.)のリズムセクションが生み出すタイトにしてしなやかなグルーヴも絶品だ。

 2度目のMCは茂木。「第1部、9人だけでやってるけど、めちゃくちゃ人気あるね!」「リハーサルから全力でやってて、すでに第2部みたい(笑)。1日2回公演なのは、俺達がアイドルだからだ!」といつものように満面の笑顔で叫ぶと、会場はさらに大きな歓声と拍手で包まれた。「今日という1日だけのために咲く花を歌った曲をやります」という言葉に導かれたのは、茂木がボーカルをつとめる「一日花 feat.imase&習志野高校吹奏楽部」。エモーショナルな歌声とスカパラのサウンド、さらに習志野高校吹奏楽部のメンバーが演奏した音源と観客のシンガロングが響き合い、心地よい感動へと結びついた。NARGOが鍵盤ハーモニカで奏でる「メリーさんのひつじ」から始まったのは、スカパラのキャリアを象徴するアンセム「SKA ME CRAZY」。軽快なビートに身体を揺らし、声と拳を挙げる観客の興奮は最高潮へ。“SKA”と書かれたスケボーに乗りながらトロンボールを吹きまくる北原のパフォーマンスも楽しい! 最後は「Pride Of Lions」。勇壮なメロディ、強靭なアンサンブルが心地よく広がり、会場が一つになるシーンはすべてのオーディエンスの胸に強く刻まれたはずだ。

 そして第2部。東京フィルハーモニー交響楽団のメンバー、オーケストラマスターの室屋光一郎、そして指揮・音楽監修に服部隆之がステージに登場。スカパラの楽曲にオーケストラ・アレンジを施した序曲からライブは幕を開けた。「MONSTER ROCK」「ホールインワン」「DOWN BEAT STOMP」「めくれたオレンジ」「美しく燃える森」の旋律が美麗かつ重厚なサウンドとともに響き渡る。「Break Into The Light」の演奏中にスカパラの9人が再び姿を見せ、東京フィルととのセッションに突入。心地よいスカのビートとクラシカルな管弦楽が共鳴し、音楽の豊かさ、奥深さをダイレクトに体感することができた。

 「【Tokyo Ska Paradise Orchestra×billboard classics symphonic concert 2025 -ENCORE-】、改めて、NHKホールにようこそ!」と歓喜の声を挙げたのは、茂木欣一。「こうやって素晴らしい1日を共有できること、本当にうれしく思っています」「続いては2003年の大ヒットナンバー!こんなにゴージャズなオーケストラ一緒に演奏できること、最高に幸せです!」というMCにリードされたのは「銀河と迷路」。言わずとしれたスカパラの代表曲であり、何度もステージを彩ってきた名曲だが、東京フィルとの共演はやはり格別。茂木のボーカルもいつも以上に映え、心地よい解放感をまとっていた。

 「みなさん、お待たせ。スペシャルゲストを紹介します!」(茂木)と呼び込まれたのは、ハナレグミ(永積崇)。ハンドクラップしながら笑顔でステージに登場した永積は「Are You Ready!この街をオアシスにしましょう!」という言葉から「オアシス」を披露。ラテンのフレーバーをたっぷり注ぎ込んだサウンドのなかで大らかな歌声を響かせ、観客の心と身体を気持ちよく解放していく。〈みんな色とりどり/重なるハーモニー〉というラインは、ジャンルを超えた音楽家たちが集まったこの日のライブの在り方と真っ直ぐにつながっていた。間奏パートでは、東京フィルが「2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調」と「帝国のマーチ(ダースベイダーのテーマ)」をつなげ、さらに大森はじめのパーカッションのソロ演奏、永積のボーカルへとバトンが渡される。それは言うまでもなく、この日、この場所でしか起こり得ないセッションだった。続いては、スカパラとハナレグミが初めて一緒に音楽を奏でた「追憶のライラック」。「“追憶”がよくわかるようになって。僕らって記憶に生かされてるんですよ。今日も素晴らしい記憶を持って帰って、明日につなげていきましょう」(永積)という印象的なMC、ゆったりとした裏打ちのリズム、クラシカルな弦と管の響き、<自由に愛した記憶があるから/終わらない未来>という歌詞が溶け合うシーンもまた、この日のハイライトの一つだった。さらに「悲しいときも踊っていいよね」(永積)という言葉から「オリビアを聴きながら」をカバー。観客もサビのフレーズを気持ちよさそうに歌い、ナチュラルな一体感が生まれた。

 ハナレグミがバックステージに下がり、鋭利なギターフレーズ、豪快なホーンセクションが鳴り響く「5 days of Tequila」へ。ここでは東京フィルが「熊蜂の飛行」のフレーズを差し込み、クラシックとスカの緊張感あふれるやり取りが実現した。

 続いて奏でられたのは、スカとジャズが有機的に結びついたサウンド。客席から“おお!”という歓声が起こるなか、中納良恵(EGO-WRAPPIN')がステージへ。披露された楽曲は「黄昏を遊ぶ猫」。憂いと切なさを滲ませながら、圧倒的な声の存在感でオーディエンスを惹きつけてみせた。中納と谷中が“スカパラは今年で36年、47都道府県ツアーやるんですよね”“ぜひ来てくださいよ”という気の置けないトークと繰り広げた後、中納とスカパラの初セッションの楽曲「縦書きの雨」。淡くて儚いメロディ、<雨が降る ここに 降り続けるいまも>という情景描写が溶け合い、“うっとり”としか言いようがない感情に包まれる。さらに「ハッピー☆ブギ」も披露。NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の主題歌として、ドラマの音楽担当をつとめた服部隆之が手掛けた楽曲だ。東京フィルによるジャズのビッグバンドを想起させる演奏のなかで、中納が華やかな歌声を高らかに響かせる、超スペシャルなセッションが実現。会場のテンションももちろん最高潮だ。

 クラシックの印象派を思わせる沖祐市のピアノをフィーチャーした「水琴窟」の後は、「Paradise Has No Border」。GAMOが「いちばん盛り上がっているところはどこだ?!」と叫びながら、NARGO、北原、谷中、川上、加藤とともにステージを移動、サビのフレーズを決める演出はいわばお約束だが、何度見てもやっぱり盛り上がってしまう。さらにGAMOが東京フィルのメンバーを煽ると、演奏家の方々も手を振り、立ち上がって盛り上がる。そして楽曲のキメに合わせてクラシックの名曲(「アイネクライネナハトムジーク」「展覧会の絵」「剣の舞」「カルメン」)を披露。観客はこの日いちばん大きい拍手と歓声で応える。スカとクラシックの垣根を超えたステージには、音楽という表現の素晴らしさが満ち溢れていた。

 鳴り止まない拍手と歓声に導かれ、スカパラのメンバーが再び登場。「思い切りスカの曲を一緒にやりたいと思います!」(谷中)と「ALL GOOD SKA IS ONE」を打ち鳴らす。「第2部の頭のoverture、聴きましたよね?胸に響くものがあって……。東京フィルの皆さんの演奏を聴いてると、自分たちの思い出が額装されたような感じがしたんですよね。“あのとき、あれでよかったんだよ”と言ってもらった感じもありました」思いが詰まった谷中の言葉に続き、中納と永積がなぜか腕を組んでステージへ。「結婚しました(笑)」「気が合っちゃって(笑)」と楽しそうに話し、朗らかな空気が広がっていく。ラストナンバーは、「ジャングル ブギ」。服部隆之の祖父にして、日本のポップス史に名を刻む服部良一が作曲、そして巨匠・黒澤明が作詞を手がけた名曲だ。「スカパラは昔からこの曲を演奏させてもらっていて。おじいさまのおかげでスカパラがあると思っています」(谷中)「ウィン・ウィンですね」(服部)というやり取りの後、スカパラ、東京フィル、中納、永積による大セッションへ。昭和と令和、クラシックとブギとスカが結びつくような音楽空間が広がり、アンコール公演は大団円を迎えた。最後にスカパラのメンバー、中納、永積、そして服部隆之がステージに並び、お互いをたたえ合う。ピンクのジャケットを羨ましがっていた(?)服部に谷中が自分のジャケットを渡し、会場は大きな拍手で包まれた。「アンコール公演でしたけど、またやりたい!」と叫んだ谷中。この会場にしたすべての人が同じ気持ちだったのは、言うまでもないだろう。

Text by 森朋之
Photo by 仁礼博

◎公演情報
【Tokyo Ska Paradise Orchestra×billboard classics symphonic concert 2025 -ENCORE-】
2025年5月10日(土)
NHKホール
OPEN 17:30/START 18:30

出演:東京スカパラダイスオーケストラ
ゲストボーカル:ハナレグミ、中納良恵(EGO-WRAPPIN')
指揮・音楽監修/編曲:服部隆之
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

公演公式サイト:
http://www.billboard-cc.com/archive/tokyoska2025

<セットリスト>
第1部
1.The Last Ninja
2.DOWN BEAT STOMP
3.遊戯みたいにGO
4.Great conjunction 2020
5.ONE EYED COBRA
6.天空橋
7.一日花
8.SKA ME CRAZY
9.Pride Of Lions

第2部
1.Overture
・MONSTER ROCK
・ホール イン ワン
・DOWN BEAT STOMP
・めくれたオレンジ
・美しく燃える森
2.Break Into The Light~約束の帽子~
3.銀河と迷路
4.オアシス(ゲスト:ハナレグミ)
5.追憶のライラック(ゲスト:ハナレグミ)
6.オリビアを聴きながら(ゲスト:ハナレグミ)
7.5 Days of TEQUILA
8.黄昏を遊ぶ猫(ゲスト:中納良恵)
9.縦書きの雨(ゲスト:中納良恵)
10.ハッピー☆ブギ(ゲスト:中納良恵)
11.水琴窟-SUIKINKUTSU-
12.Paradise Has No Border
EC1.All Good Ska Is One
EC2.ジャングル ブギ(ゲスト:ハナレグミ、中納良恵)

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